隠し球はソウルフード

 

「週刊NY生活」という新聞がアメリカにある。「海外で存在感のある媒体」として共同通信に取り上げられたこともあり、新聞が次々と淘汰されるアメリカにあって「今」の情報がわかる新聞として現地の人々に支持されている。その「週刊NY生活」の2014年12月6日版にこんな記事があった。

 銀座と表参道の技術

 ガーデン 、NYにオープン

 オープニングパーティは立錐の余地もないほど盛況で、現地関係者の関心の高さをうかがわせた

 これは、グリニッジ通りとワシントン通りの間に2014年12月1日オープンした「GARDEN NY」のことだ。このエリアはNYの中でもヘアサロンの激戦区。そこに東京で、日本で、結果を出し続けてきたGARDENが出店するとあって大きな注目を集めた。

 そのオープンから遡ること1年ほど前。GARDEN harajukuで中丸京子さんに話を聞いたとき、彼女は、母親が毎日、持たせてくれているというおにぎりを見せてくれた。

「海外で働くことに母親は、あまり賛成ではないんですよ。GARDENには、他にもスタッフがいるでしょ? なんで、大切な私の娘が異国の地に行かなければならないの?と思っているみたいで(苦笑)」

 手塩にかけて育て、美容の聖地とも言える原宿の第一線で活躍している娘を親としては誇らしい気持ちで見ていたことだろう。そして、才能をさらに飛躍させてほしいと願ってはいても、すぐに会える距離ではない海外に行ってしまうのは、親としては寂しくてたまらないに違いない。

「NY出店の計画が立ち上がったときに、行きたいって迷いなく思ったんです。東京では雑誌の撮影も経験させてもらった。ヘアショーも何度も挑戦させてもらった。サロンワークも充実している。でも、未知の力を未知の場で試したいって、ムクムクと気持ちが湧き上がってきて、それは止められませんでした」

 彼女は、NY行きのスタッフに選別されたあと、一人暮らしをしていた住まいを引き払った。そして、せめて日本にいる間は、母親と少しでも一緒の時間をつくろうと実家に戻ることに決めた。

「いらないって言ってるのに(苦笑)、お弁当を作るって毎日、持たせてくれるんです。早朝に集合のときでも、母親は用意してくれるんです。お客さまが途切れなくて食べられないときがあるからって、事情を伝えても、せめておにぎりだけでもって作ってくれるんです。おにぎりなら、時間がなくても食べられるでしょって」

 アルミホイルでくるまれた素朴なおにぎりを彼女は、まるで何か大切なものを持つように両手で包んだ。

「私は、気の強いほうだから、母親とはケンカすることもあるし、決して、仲よしこよしな感じじゃないんです。気持ちよくNYにいってらっしゃいって送り出してくれるとも思えないし(笑)。でも、このおにぎりを見ると、時間がなくても食事をとれって言われているようで、体調を崩したらNYで頑張れないよ!って応援してくれているように感じます」

それから1年。「GARDEN NY」のオープン日。異国の地で、日本にいたときのようにお客さまに接し、テキパキと働いている彼女の姿がそこにはあった。

 GARDENのようにエネルギーのあるサロンが出店を続けると、とかく勢いだけでやっているように誤解されがちだ。けれども、どの店舗にも、それを支えるスタッフがいて、そのスタッフを支える家族や仲間がいる。どこででも通用する力をGARDENが持っているのは、そんな下支えしてくれている人の思いに、それぞれのスタッフが敏感だからだろう。きちんと愛という栄養を蓄えて、どのスタッフも新たな場に飛び立つ。愛という栄養に満たされたスタッフがお客さまにどのように接するか? それは、GARDENのスタッフに触れれば、すぐにわかる。