どこでだって つかめるものをつかむ!

 

「ときどき、今、フロアではどんなカットが行われているんだろう?とか、誰がどんなパーマの指示を出して、誰がロッドをどんなふうに巻いているかな?とか、どんな色のカラーリングをしているのかな?って、見に行きたくなるときも、正直、あります」

 そう話すのは、GARDEN harajuku で雑誌係を担当しているアシスタントの万徳香奈さん。GARDENでは、さまざまな係があり、それぞれのスタッフになんらかの係が割り振られている。雑誌係は、雑誌を管理するのが主な仕事だ。お客さまが滞在中に退屈しないように、最新のファッション誌はもちろん、ゴルフ雑誌、実用情報誌など、さまざまな雑誌が用意されている。20~30代向けの女性ファッション誌は、同じニーズのあるお客さまの滞在時間が重なることを考慮して、複数冊用意されている。

「毎月、大量の雑誌が搬入されます。その一冊一冊にフィルムカバーを貼ります。多くの人が手にするので、カバーをつけないとあっという間に読めないような状態になってしまうのです。ボロボロの雑誌をお客さまにお出しするわけにはいきません。とはいっても、購入できる雑誌の数には限りがありますから」

 こう言いながら、彼女は、粛々と手を動かし、フィルムカバーを貼っていく。

「雑誌の発売日は、かぶっていることも多いので、搬入が重なるとバックヤードで朝から晩まで、カバーを貼っています。それが何日か続くこともあるんですよ」

 雑誌が汚れないようにと、不要になった段ボールで床に簡易のスペースを作り、後輩にも指示を出しながら作業を続ける彼女。簡単そうに見えるが、フィルムカバーは、ぺらっとした紙に粘着面を貼らなければならず、気を抜くとあっという間に気泡が入ってしまう。

「雑誌係の1年目は、いっぱい失敗しましたよ(笑)。何度も貼り直しましたし、無駄もいっぱいありました。自分で納得がいかなくて雑誌を買い直したこともあります。でも2年もやっている今は、貼り直しすることもなくピシッと気持ちよく貼れています」

「ここにいるのって好きですか?」

 意地悪な質問を投げかけると彼女は即答した。

「誰よりも早く、雑誌を見ることができるんですよ。それも、1冊や2冊じゃなくて、世の中に出回っている人気の雑誌をほとんど見ることができる。最初のうちは、こんな日の当たらないところで……と思ったこともありましたけれど(笑)、雑誌って見ているうちにいろんなことに気づくんです。カバーを貼るために表紙を見ていると、たとえば、梨花さんなんかは、いつもどれかの雑誌の表紙になっている。とにかく登場回数が多いんです。ほかにも、ライバル雑誌なのに似たような洋服が表紙に載っていたりする。今、何が流行っているのかとか、何を流行らそうとしているのかが、カバーを貼りながらわかるんです」

 巷では、女性像研究と題して、雑誌を軸にお客さまのなりたい女性像を推測するためのセミナーが開催されていたりする。またマーケティング会社を利用して、どんなものが女性にウケるのかを探る時代のフィーリング調査などが行われている。一方、彼女は、来る日も来る日も表紙にカバーを貼りながら、それらを受けるのと同じような情報を自然と入手している。

「シャンプーに入ってお客さまと会話が弾んだときなどに、あぁ雑誌係でよかったなって思います。サロン内で先輩美容師がトレンド研究の勉強会を開いてくれるときも、深く理解できているような気がします」

 日が当たらないと腐らずに、そこで何かをつかもうと前向きになる。そうするだけで、そこは日が当たる場所に変わるのかもしれない。