耳で、目で、聞く、聴く、訊く!

 

カットの練習、メイクの勉強、トレンドスタイルの研究……。GARDENでは、全体での集まりもあれば、各店舗内での集まりもある。そしてときには、店舗をまたいでスタッフたちが集合することもある。

 ある日の開店前、drive for GARDEN をのぞくと、ひとつのセット面を囲んで、メイクの勉強会が行われていた。講師を務めるのは、数々の雑誌で活躍する大戸久美子さん。カットやパーマのうまさはもちろん、ヘアアレンジの幅の広さから、女性誌で引っぱりだこの人気スタイリストだ。ヘアアレンジ企画は、ただ1スタイルの仕上がりを見せる一般的なヘアスタイルカタログ企画とは異なり、少なくともアレンジ前とアレンジ後の2つ以上のスタイルを撮影することになる。「1つのヘアスタイルで、ONもOFFもエレガントもキュートも!」などのような企画の場合は、撮影のカット数が多く、ヘアアレンジだけでなく、メイクのバリエーションの豊富さまでもが要求される。そんな企画で太鼓判を押されている大戸さんのメイク勉強会には、朝早い時間にもかかわらず、入社3年目のアシスタントが多数参加していた。その中で、ひときわ熱心にメモをとっていた男性がいた。

「自分で言うのも何ですけれど、僕は、基本的にノリでいくタイプなんです(笑)。GARDENに入社したのも、1次募集で受かった専門学校の同級生がいて、ならば! と2次募集で申し込んだんです。ふざけているワケではないんですけれど、面接でも、そんないつものノリで臨んだら、人が緊張するような場で腹が据わっていると思われたのか、採用されました。でも、技術に関しては、当たり前ですけれど、ノリじゃ太刀打ちできない。とくにメイクは、これまでの人生で女性スタッフに比べると経験の差が大きいから、勉強しても勉強しても足りないんです」(drive for GARDEN  アシスタント・河上紘之さん)

 勉強会中は、集まっている人々の隙間から、細かなコツを見逃さないように身を乗り出し、ひとつの工程を終えるとすぐさま片手に持っている紙にペンを走らせる。大戸さんがひとつひとつ丁寧に教えるたびに、隙を見て質問をしていた河上さんのメモには、表だけでなく裏にまで走り書きでいろいろなことが書いてあった。

「教えてもらっているときは、パパッと書けるようにメモ用紙なんですけれど、実はこれを清書するノートも持っています。清書用のノートには、これまで教えてもらったことが書いてあるだけでなく、何度も読み返して、新たに勉強したことを書き足しているんです。『何度も同じことを書くのは時間の無駄じゃない?』と言う人もいるんですけれど、書くことで、知識が自分の中に定着していきます。人から話を聞いたときは、わかったようなつもりでいても、実は自分の中の引き出しにきちんとおさまっていないこともある。でも、メモ用紙に書いて、それを見ながら整理してノートに書いて、さらに別の機会に書き足していくと、書いているのは自分だから、きちんと自分の知識の財産になっていくんですよ」

「キク」には、聞く、聴く、訊くの3つの“キキかた”がある。注力していなくても耳に入ってくる聞くに対して、音楽などをキクときによく使われる聴くは、その対象を意識してキクことだ。そして、質問するの意味を持つのが訊く。どれが上でどれが下という上下はなく、そのどれもが受容できることだけれど、平坦な言い方をすれば、質が異なり、聞くはlisten、聴くはhear、訊くはaskだ。その3つのキクがGARDENでは、当たり前に行われている。

 さまざまなヘアサロンで勉強会が熱心に行われているにもかかわらず、スタッフの技術が伸びないのは、参加者がただ聞いているだけだからかもしれない。だとすれば、スタッフが活躍できる場をつくるために、次々と店舗をオープンさせているGARDEN。それは、スタッフが次々に育ってしまっている証だろう。河上さんのような意欲のあるスタッフが多くいて、確実に成長しているのだ。