すべての壁は扉になる

 

 シャンプーテストに合格できない。ホイルワークが上手にできない。スタイリストデビューがいつできるかわからない。スタイリストデビューしたのにお客さまが来ない。パーマで失敗をした。クレームが寄せられた。ライバルから意地悪をされる。お客さまがついたのに失客してしまう。目をかけていた後輩が店を辞めた。店販品が売れない。店の売り上げが伸びない。練習を積んだのにコンテストで入賞できない。あとからスタイリストデビューした後輩に集客数で負けてしまう。近くに新しくヘアサロンがオープンした。お客さまに満足していただけたか不安で仕方がない。

 ひとたび、美容師として人生を歩もうと思ったら、アシスタントにも売れっ子スタイリストにも、さまざまな壁が待ち受けている。

 仕事だけではない。店が忙しくて恋人とのデートがままならない。体調を崩す。家族が病に倒れる……。プライベートでもさまざまな壁が立ち向かっている。

 GARDENには、そんな壁にぶち当たっているのを感じさせず、いつ訪れてもニコニコしている女性がいる。それは、天真爛漫を絵に描いたような国武さゆりさんだ。

「アシスタントのときも楽しかったけれど、スタイリストになってから楽しさは増しました。アシスタント時代と比べて、スタイリストになってからのほうが、ぶち当たる壁が高くなったり、分厚くなったりしているのを感じることもあるんですけれど、振り返ってみれば、どの壁も乗り越えてきたから今があるわけだし、私の先を歩いている人たちは、きっと私がぶつかった壁を乗り越えてきたはず。だから、私がもし壁の乗り越え方がわからなかったら相談すればいいんだし、ブツブツ文句を言っている時間がもったいないなって最近思うようになったんですよ。アシスタント時代、誰よりもブツブツ文句を言っていたのは私だったかもしれない(笑)。けれど、そんな私でも今は、指名してくれるお客さまがいらっしゃって、慕ってくれる後輩がいて、可愛がってくれる先輩がいる。ここにいるとすべての壁は扉になる気がします」(drive for garden スタイリスト・国武さゆりさん)

 器用に立ち回れる性格ではない彼女がアシスタント時代に叱られているのを何度か見たことがある。スタイリストデビューしてからも、プレッシャーからか忙しさによるストレスからか「吹き出物がなかなか治らない」とつぶやいていたのを耳にしたこともある。それでも、彼女は、いつも元気いっぱいだ。

「えへらえへら笑っているので、真剣じゃないって思う人がいるかもしれないけれど、下を向いて凹んでいたら、何も変わらない。何も見つけられない。失敗をしたときに反省することは、とても大切だけど、落ち込んでいたって根本的には何も解決しない。自分は駄目な人間なんだっていうことを知るために私は美容師をめざしたわけじゃないから、上を向いて笑うようにしているんです。だって、壁が扉になったら、その扉を開けるのは自分。下を向いていたら、扉は開けられないから」(国武さん)

 drive for gardenのロゴのiには、「ロウソクの炎を他のロウソクに分けても火は消えないように、愛も分け与えても減らない」という思いが込められていると以前に聞いた。アンティークの扉がパーテーションとしてdrive for gardenに設置されているのも、GARDENの誰かの思いがそこに込められているからなのだろう。