仲間が自分が、自分を信じているから どんな舞台でも力を発揮できる

 

辞書によると、一定の課題を遂行することのできる力が「能力」で、実際に備えている能力、本当の力量が「実力」だという。

 練習のときはいつもフルマラソンを2時間10分台で走れるのに、いざ大会に出場すると自分らしい走りができずに2時間15分を切れたことがない。こういう場合は、能力があっても実力が発揮できていないのだろう。

 先日、美容メーカーのヘアコンテストが行われた。応募資格は、美容師歴10年以下のスタイリスト。応募総数1125名の中から、最後のステージに立てるファイナリストは、全国でたった15名だけ。その内の2名をGARDENが占めていた。

 そのファイナリストのひとりは、ステージ上でモデルを立たせたままカットをした。異例ともいえるスタイルで勝負に挑んだのである。

「今回のコンテストのテーマは『あなたの街のit girl』でした。it girlとは、内面からにじみ出る美しさと個性的な魅力を持つ女のコのこと。ヘアデザイン、トータルコーディネート、ステージ上のテクニックが審査基準の軸となると聞いていたので、私は、自分が手配したモデルの持っている個性的な魅力を最初から、きちんと見える形でアピールしたいと思ったんです。与えられた競技時間は、たったの15分。それを目いっぱい使いたくて」(GARDEN  Tokyoスタイリスト・津田恵さん)

 彼女がモデルとして手配した女のコは177センチの長身。

「15名のファイナリストは、みんなライバルなので、コンテスト当日まで、誰がどんなモデルを用意しているのかを知ることはできませんでした。でも、当日のリハーサルのとき出場者を見渡したら、私のモデルが一番、背が高かったんです。その瞬間に、決めました。長身の彼女のよさが際立つようにしようって。コンテストのルールをすぐに確認しましたが、ステージ上に用意したモデル用のイスにモデルを座らせなければならないという項目は見当たらなかったので、ヨシ!と気合いを入れて、立たせたままカットしたんです」

 この日のコンテストは、全国的にも有名なスゴ腕美容師の他に、さまざまな雑誌の編集長などが審査員を務め、さらに会場には約1万人もの観客がいた。

「思うようなスタイルにできないんじゃないか? 本番になったら手が動かないんじゃないか? コンテストの前日までは、いろいろ考えてしまって、毎日、吐きそうでした(苦笑)」

 けれど。いざ、勝負を終えて控室に戻ってきた彼女の第一声は、「気持ちよかった! 走りきれました!」だった。ふと見ると、彼女の控室の片隅には、GARDENスタッフが寄せ書きをした必勝手ぬぐいが置かれていた。

「リハーサルを終えて、本番の準備をしていたら、アシスタントが持ってきてくれたんです。みんなで応援していますって」

 そこには、「ツダならできる!! 北田ゆうすけ」という文字があった。数々の有名雑誌の撮影で指名が入り、サロンでの売り上げもいつも上位。津田さんが憧れている先輩スタイリストのひとりだ。

「いざ!」というときに、実力をきちんと発揮できるかどうか。これは、自分の力にきちんと自信を持っているかどうかにかかっているのかもしれない。そして、その自信は……。GARDENの場合、仲間からの力強い言葉にしっかりと支えられている。